「柱島読本」

行事


 柱島の行事は、年間を通じ大小含めて20〜25位ある。しかしながら現在あまり行われなくなったものも多い。それらも含めて次表は月別の行事の一覧である。

 1月 お宮参り お稲荷様 年祝い おたんや(善立寺) おたんや休み    
 2月 節分 祈念祭 恵比須祭 旧正月 永代経法要            
 3月 彼岸法要
 4月 花見 おせったい(お太師様)
 5月 宮ごもり 端午の節句 降誕会
 6月 不老様(くろう様) 陸奥慰霊祭
 7月 泥落とし
 8月 盆踊り(戦没者慰霊祭)花火大会 おせったい(お太師様)八幡祭(中祭り)
 9月 彼岸法要
10月 道つくり 秋祭り(本祭り)
11月 猪子 宮ごもり 恵比須祭 おたんや(西栄寺)
12月 夜回り(〜旧正月)

ハ注)上記のほかにも毎月行事として、おにおう様(17日)、来見の観音様(17日)、お太師様(旧の20日)などがあり、また、不定期ではあるが来見の「いぼ神様」などがある。

*各行事について
(1)お宮参り
 大晦日の夜から元日にかけて氏神様の賀茂神社にお参りするのが恒例である。これは、岩国での椎尾神社や白崎八幡宮などに初詣に行くのと同じである。島民はこの日の午前0時から2時ぐらいか、あるいは、正月3が日にお参りする。

(2)お稲荷さま
 1月2日に行われる。ここのお稲荷さまは、管理してらっしゃる家の5・6代目の先祖の方が作られ現在の方で17代目になる。当日はお米、お酒、にしめなどをお供えし「正一位」と言って拝んでいたそうである。

(3)年祝い
 厄年を迎えられた家庭で行われる行事である。厄祓いのため各家庭からお餅やお神酒を持参してお祓いを受ける。(男性42歳・61歳、女性33歳、男女88歳)昔は近所の方が集まりお祝いの支度をして祝ったそうである。おもしろいことに厄年どうしの家庭は「祝い負け」を嫌ってたとえ兄弟でもお互いにお祝いにいかないそうである。

(4)おたんや
 正式名を「報恩講」と言い、これは、親鸞聖人の恩に報いるために行われるものである。西本願寺派の善立寺では1月に執り行われ、東本願寺の西栄寺では11月に執り行われる。

(5)おたんや休み
 成人の日前後の主に漁業関係者の休みである。これは、柱島から魚を出荷する草津港の漁業機関が休みのために起こるものである。

(6)とんど
 主に来見・引地・中野地区の各家庭で行われる。各家庭では「おにのくい」と呼ばれるとべらの葉やしめなわを焼き、その時に出る煙にあたると風邪をひかないと言われる。

(7)節分
 節分の日の晩には各家庭で「おにのくい」を玄関先に立てる習慣がある。これは鬼よけのためである。また、この日こんにゃくを食べる。

(8)祈年祭
 旧暦の1月7日から9日にかけて行われ、賀茂神社では五穀豊穣をお祈りする行事である。年請祭とも呼ばれる。

(9)恵比須祭
 旧暦の1月10日と新暦の11月に行われる。現在1月の祭りは4月の土曜日に行われる。主に漁業に従事する人が賀茂神社の境内にある恵比須の社に大漁を願うものである。

(1 0)旧正月
 旧暦の正月に各家庭で寒餅をつく行事である。このときつく餅には、大豆の入ったものもある。

(1 1)永代経法要
 100回忌を越える柱島の門戸の祖先の法要で、善立寺と西栄寺で隔年ごとに執り行われる行事である。

(1 2)春の彼岸法要
 彼岸とはみ仏の世界、悟りの世界のことで、このときは、心を改め、ご先祖に自分の姿を見ていただき自分自身を顧みるときである。彼岸の入りから中日までは善立寺で行われ、中日からは西栄寺で行われる。

(1 3)お花見
 毎年4月3日に賀茂神社の桜の下で各家庭で作った弁当を開いて行われる。賀茂神社以外の場所でも行われる。仕事を休んで行われるため島民の楽しみの一つである。最近では、春の「宮ごもり」もこの日に行われるということである。

(1 4)おせったい[お太師様]
 春は旧暦の3月21日、秋は新暦の8月20日に行われる。現在は牧地区の1ヶ所、桧原地区の2ヶ所、松田地区の3ヶ所、来見地区の1ヶ所がある。各場所では、年配の女性が参られた人の世話をする。そのため子供のほとんどがお参りをし、たくさんのお菓子やお餅をもらってくる。子供達の楽しみの一つである。また、踊り場では盆過ぎに、盆踊りをするそうである。

(1 5)宮ごもり
 旧暦の4月3日と10月3日に賀茂神社で家内安全や豊作を祈る。これは、昔疫病が流行したとき、お参りしたら疫病がおさまったことに始まる。この日は賀茂神社の氏神様にお酒を供え、お弁当を境内で開く。

(1 6)端午の節句
 子供の日に端午の節句を各家庭で行う。おもしろいことに長男のときだけ行い、次男や三男のときには行わない風習がある。3月の桃の節句のお祝いも行われない。

(1 7)降誕会
 お寺で行われる行事で親鸞聖人のお誕生日をお祝いするものである。

(1 8)不老様[くろう様]
 牧地区消防車庫の上にある島民が「くろう様」と呼んでいるこの神様は「不老様」がなまったものである。「不老」は文字どうり不老長寿を意味しており、医者いらず、また学問の神様である。正しい名前は、「ちいさこべすくなひこの尊(みこと)」という。

(1 9)陸奥慰霊祭
 昭和18年6月8日正午過ぎ、旧日本海軍の軍艦「陸奥」が柱島と、伊保田の間の海上で謎の沈没をした。その遺族や漁業組合のお世話で6月9日に浦庄の慰霊碑で慰霊祭が執り行われる。遠くは北海道、群馬県、東京都からも参加されるそうである。なお、6月8日には伊保田でも執り行われる。

(2 0)泥おとし
 この季節まで、農耕に用いた農機具を、きれいに洗い田畑の神様に感謝をし、豊作を祈るものである。各家庭で行われるものである。

(2 1)盆踊り
 戦没者慰霊祭の後、学校において行われる。この盆踊りは柱島内外から人が集まり大層賑やかである。盆踊りの種類には、キソン、はやし、いせ、ちょん刈り、四ツ星、木山、東京音頭などがあるそうである。昔、初盆の家では、家の前で盆踊りを踊ったそうである。

(2 2)花火大会(現在は行われていない)
 盆踊りと前後して一文字の防波堤でとりおこなわれる。当初は、島の出身者で作られた「島友会」によって始められたが現在は自治会の方が世話をされ、様々な宣伝や、お祝い事、あるいは故人をしのんで打ち上げられる。島外に出ておられる方も盆踊りや花火大会には帰ってこられ賑やかにとりおこなわれる。

(2 3)八幡祭
 通称「中まつり」と呼ばれ旧暦の8月15日に行われるのが恒例である。この日はお弁当を持参して賀茂神社か八幡様で広げられる方が多い。なお、最近では秋の「宮ごもり」と同じ日に執り行われるようである。

(2 4)道つくり
 秋祭りの前に島内の全戸が参加して、道端の草を刈ったり、あるいは側溝をさらったりする作業である。

(2 5)秋祭り
 通称「本まつり」と呼ばれるこの祭は旧暦の9月8,9日に賀茂神社で行われるのが恒例であるが、最近では島外に住んでいる島出身者のことを考え旧暦の9月8,9日の前の土曜日から日曜にかけて行われる。この祭は柱島の氏神様の祭で島民の多くが参加し、最近ではいろいろな品物の当たるくじもあるため老若男女を問わず島民の楽しみの一つである。五穀豊穣部落安全などを祈り、当日にはおみこしが出る。このおみこしはその年に成人した男子がかつぐことが習いであるが、最近では人数が少なくなったため厄年の人もかつがれる。みこし自体は今から150年余り前につくられ、昭和63年に大修復された。

(2 6)猪子(いのこ)
 昭和25年ぐらいまで行われていたが、現在では既になくなった行事である。昔は一番猪子、二番猪子というように11月中に2回行われていたようである。子ども達が島内の各家々を回りお餅(猪子餅と呼ばれる)やお菓子を貰っていたようである。そのため各家々では猪子餅をついていたそうである。現在では「猪子の日に、こたつを出すと火事にならない」という言い伝えがある。なお、この行事は柱島では現存しないが端島では、まだ続いているようである。

(2 7)夜回り
 これも既になくなったものである。毎年12月20日〜1月いっぱいの間、島の青年団が拍子木をもって「火の用心」と言いながら一夜に3回ぐらい島内を回ったものである。遅いときは12時を越えていたそうである。

(2 8)おにおう様
  旧柱島出張所の上にある観音堂の事である。年配の方の中には毎月16日にお参りをされている方もある。ここは昔、禅宗のお寺があり「おにおう様」はその名残である。牛が病気になったとき牛の絵をもってお参りすると牛の病気が治ったそうである。漁師の人は大漁祈願に参られるそうである。泣き叫ぶ子共を泣きやませるために島民は「おにおう様に連れていく」と言って聞かせるそうであるが、これは、昔のおにおう様(観音様の両脇にある2体の仏様)が文字どおり「仁王様」のようなお顔であったためにできた風習である。現在のおにおう様は、戦時中に塗り替えられたものである。また、禅宗寺のご本尊は久賀町のお寺に移されたそうである。

(2 9)来見観音堂
 年配の方の中には毎月17日にお参りをされている方もある。

*不定期な行事

(1)いぼ神様
 賀茂神社に行く道の途中「犬吠の鼻」にある神様で、体にできた「いぼ」を取ってもらいにお参りをされる。お参りをするときにはサザエの殻の中に甘酒を入れてお供えをする風習がある。また「いぼ神様」に供えてあるサザエの殻に溜まっている水をいぼにつけると、よく効くそうである。

(2)船おろし
 新しい船を造ったときに行われる進水式のことで、まず船は沖に出て3回ぐるっと回る。そして、岸壁に接岸し赤白のお餅をまきいろいろな行事を行う。船の進水式は満ち潮の八分目に行う。また「くまお」と呼ばれる方角にも気をつけるそうである。
※「くまお」について
 例えば大島の久賀で船を造った場合、久賀はここ柱島から見て西の方角にある。そこでその船の進水式は寅、午、戌の日には行わないと言うことである。なお、方角と日の組み合わせは次のとおりである。
 【東】・・・子、辰、申の日  【北】・・・丑、巳、酉の日 
 【西】・・・寅、午、戌の日  【南】・・・卯、未、亥の日 

(3)棟上げ 
 このときも「船下し」と同じように赤白の餅をまきお祝いをする。ここでの棟上げは家が完成してお祝いするのが特色である。当日は近所や親戚の者が集まってお祝いのための準備などをしている。このように協力して仕事をすることを「こうろく」といい、田植えの時などにも島民が協力していたものである。 

(4)若宮様
 若宮様がある家で、正月から旧正月の間に神主さんを呼んで行う行事。

(5)船たで
 木造船の船底をこっぱ(松葉の枯れたもの)を燃やして、木にしみ込んだ水分を少なくし、浮力をよくする仕事のことである。そのとき船神様に船から降りていただくために船縁をたたくそうである。船たでが終わったときも同じようにして船神様に乗っていただくそうである。

(6)おおづけ
 漁業で漁の方法が変わるとき「くまお」の日をさけ、その漁具や船神様にお神酒をあげ、漁をすることである。海神様にもお神酒をあげるが、まず左舷側からあげ、次に右舷側にあげる。この船神様の嫌われるものとして、特に刃物があり、そのために海に金物を落としたときには、そのつど海神様にお神酒をあげるそうである。